審決は「Dr.Coo」の下段の「AQUA COLLAGEN GEL」について識別力があるとして、4条1項11号違反として、取り消し決定をしました。知財高裁も、この判断を維持しました。
認定事実によれば,本件商標の登録査定時(平成26年9月8日)
において,申立人は,我が国のスキンケア市場における有力メーカーの一つであり,とりわけドクターズコスメの分野では,パイオニア的な存在である
とともに,圧倒的なシェアを誇るトップメーカーであって,スキンケア化粧
品やドクターズコスメの取引者,需要者らに広く知られる存在であったこと,
申立人が製造,販売する商品の中でも,アクアコラーゲンゲル化粧品は,申
立人の設立当初から15年以上にわたって継続的に販売される主力商品であ
り,全国でのテレビCMをはじめとする大規模かつ長年に及ぶ宣伝・広告等
により,近年においては,年間100億円を超える売上高を維持し,各種の
人気投票等でも常に上位にランクされるなど,人気商品としての地位を確立
し,スキンケア化粧品やドクターズコスメの取引者,需要者らに広く知られ
ていたこと,アクアコラーゲンゲル化粧品に係る上記宣伝・広告等の多くに
おいては,「アクアコラーゲンゲル」という商品名の片仮名表記とともに,当該化粧品容器の画像が表記され,その中には,ドクターシーラボ標章の下に「Aqua-Collagen-Gel」の欧文字が組み合わされた標章(引用商標1と実
質的に同一の標章)が表示され,更に,その下に,各種の商品ごとに付加された名称(「Super Moisture」など)が表示されていることが認められる。 そして,これらの事実を総合すると,アクアコラーゲンゲル化粧品の商品
名を片仮名で表記した「アクアコラーゲンゲル」の標章及び引用商標1は,本件商標の登録査定時(平成26年9月8日)において,申立人が製造,販売するアクアコラーゲンゲル化粧品を表示する商標として,全国のスキンケア化粧品やドクターズコスメの取引者,需要者らの間において広く認識され
ていたものと認めることができる。
また,商品の製造,販売を行う企業においては,その企業自体の営業標識
となるロゴやマーク(いわゆるハウスマーク)を用いるほかに,商品のブラ
ンド名を表す商標を用いる場合があり,その中でも,シリーズ商品や一定のカテゴリーに属する複数の商品群に統一的な商標(いわゆるファミリーマー
ク)を使用した上で,その中の個々の商品について,ファミリーマークに付
加して個別の商品を識別するための標章(いわゆるペットマーク)を使用す
ることが一般的に行われており,また,これらのマークを組み合わせて使用
することも一般的に行われている(当裁判所に顕著な事実)。そこで,この
ような取引の実情を踏まえて考察すれば,前記宣伝・広告等におけるアクア
コラーゲンゲル化粧品の容器の画像中の標章に接した取引者,需要者らにお
いては,その構成中のドクターシーラボ標章については,企業名である「ドクターシーラボ」の欧文字表記に相当する「Dr.Ci:Labo」の文字を含む図形
であり,申立人の広告等の中で単独でも用いられていることから,申立人の
ハウスマークに相当するものとして認識し,また,その下の「AquaCollagen-Gel」の欧文字については,アクアコラーゲンゲル化粧品に共通し
て用いられる「アクアコラーゲンゲル」の商品名を欧文字表記したファミリーマークに相当するものとして認識し,更に,その下の「Super Moisture」
などの表示については,アクアコラーゲンゲル化粧品のシリーズにおける個別の商品を識別するためのペットマークに相当するものとして認識し,全体
として,これらのマークが組み合わされた商標であると自然に理解するもの
と考えられる。してみると,引用商標1は,その全体が,申立人の製造,販売するアクアコラーゲンゲル化粧品を表示するというのみならず,その構成
中の「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分のみをとらえても,アクアコラーゲ
ンゲル化粧品を示すファミリーマークに相当するものとして独立の商品識別
機能を果たしているというべきであり,引用商標1及びその構成中の
「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分は,全国のスキンケア化粧品やドクター
ズコスメの取引者,需要者らの間において,そのようなものとして認識され,
広く知られていたということができる。
2 本件商標と引用商標1及び2の類否について
そこで,以上を踏まえた上で,本件商標と引用商標1及び2との類否につい
て判断する。
本件商標について
原告は,本件商標の構成中,「AQUA COLLAGEN GEL」の文字部分が独立し
て自他商品の識別標識としての機能を果たし,これから「アクアコラーゲンゲル」の称呼が生じるとした本件決定の判断は誤りである旨主張するので,
以下検討する。
ア 本件商標は,別紙1記載のとおり,上段に欧文字の「Dr.Coo」を,下段
に欧文字の「AQUA COLLAGEN GEL」を,それぞれ横書きしてなる結合商標
である。
しかるところ,上記「Dr.Coo」の文字と上記「AQUA COLLAGEN GEL」の
文字とは,上下二段に分けて表記されている上,前者の文字が後者よりやや大きいこと,前者が大文字と小文字の組合せであるのに対し,後者は大
文字のみからなること,両者の文字数の違いにより,両者の文字列全体の
幅が大きく異なることといった相違があることからすると,両者は,外観
上明瞭に区別して認識されるものといえる。
また,本件商標から生じる観念についてみても,「Dr.Coo」の文字から
は,直ちに特定の観念が生じるとは認められず,他方,「AQUA COLLAGEN
GEL」の文字については,「AQUA」は「水」を,「COLLAGEN」は「コラー
ゲン(硬たんぱく質の一種)」を,「GEL」は「コロイド溶液がゼリー状
に固化したもの」をそれぞれ意味する外国語として一般的に知られている
ことから,これらを組み合わせた観念が生じることが考えられるが,
「Dr.Coo」の文字と結びついた観念が生じるものではないから,両者は,
観念の点においても特段の結びつきがあるものではなく,明瞭に区別して
認識されるものといえる。
加えて,前記1 で述べたとおり,「アクアコラーゲンゲル」の標章及
び引用商標1の構成中の「Aqua-Collagen-Gel」の文字部分が,申立人の製造,販売するアクアコラーゲンゲル化粧品を示すものとして,スキンケ
ア化粧品やドクターズコスメに係る全国の取引者,需要者らに広く認識さ
れている事実からすれば,本件商標がその指定商品である「コラーゲンを
配合したゲル状の化粧品,コラーゲンを配合したゲル状のせっけん類」に
使用された場合,これに接した取引者,需要者が,スキンケア化粧品等の
分野において周知な「アクアコラーゲンゲル」の標章や「Aqua-CollagenGel」の文字と称呼や欧文字の綴りを共通にする下段の「AQUA
COLLAGEN
GEL」の部分に特に注目することは,自然にあり得ることであるといえる。
以上を総合すれば,本件商標においては,その構成のうち下段の「AQUA
COLLAGEN GEL」の文字部分が,取引者,需要者に対し商品の識別標識とし
て強く支配的な印象を与える部分として認識されることがあるというべき
であるから,当該部分を本件商標の要部として把握することが可能であり,そこから,「アクアコラーゲンゲル」の称呼が生じるとともに,申立人の製造,販売する人気のシリーズ商品であるアクアコラーゲンゲル化粧品の
観念が生じるものと認めることができる。
◆判決本文