控訴審も楽曲の翻案を否定しました。
これに対し,控訴人は,原告楽曲と被告楽曲のBPM(テンポ)がほぼ同
じである点は,両楽曲のいかなる相違点をも打ち消すほどに,同一性を示す
根拠となる旨主張する。
しかし,楽曲についての複製,翻案の判断に当たっては,楽曲を構成する諸要素のうち,まずは旋律の同一性・類似性を中心に考慮し,必要に応じて
リズム,テンポ等の他の要素の同一性・類似性をも総合的に考慮して判断す
べきものといえるから,原告楽曲と被告楽曲のテンポがほぼ同じであるから
といって,直ちに両楽曲の同一性が根拠づけられるものではない。そして,
上記で述べたとおり,両楽曲は,比較に当たっての中心的な要素となるべき
旋律において多くの相違が認められることから,被告楽曲から原告楽曲の表現上の特徴を直接感得することができるとは認め難いといえる。他方,両楽
曲のテンポが共通する点は,募集条件により曲の長さや歌詞等が指定されて
いたことによるものと理解し得ることから,楽曲の表現上の本質的な特徴を基礎づける要素に関わる共通点とはいえないのであって,上記判断を左右す
るものではない。
したがって,控訴人の上記主張は理由がない。
また,控訴人は,両楽曲が実質的に同一の楽曲であることは,両楽曲の歌
と伴奏をそれぞれ入れ替えたもの(甲32及び33)が聴感上違和感なく再
生できることから明らかであるとも主張するが,そのようなことが,両楽曲
の同一性を直ちに根拠づけるものでないことは明らかであるから,甲32及
び33によっても,上記判断が左右されるものではない。
その他にも控訴人は,原告楽曲と被告楽曲が実質的に同一の楽曲である旨
をるる主張するが,以上説示したところに照らし,いずれも採用することが
できない。
◆判決本文
◆原審はこちら。平成27(ワ)21850