2019年1月アーカイブ

今回は、商標登録を受けたのに、使用形態が登録時とずれていたため、登録が取り消された事例を取り上げます。

 商標法には、不使用取消審判という制度があります。これは、登録はされているが使用されていない場合、登録を取り消すことで、これを使いたい人が使えるようにしようという制度です(商標法50条)。
 商標権者は、このような取消をさけるためには、登録された商標を使用する必要があります。登録された商標を使用といっても、完全同一である必要はありません。たとえば、ゴシック体で登録して明朝体で使用したり、アルファベットの大文字APPLEで登録して、これを全て小文字appleで使用したりします。この程度の変形であれば、社会通念上、同一であると扱われます。つまり、この程度の変形での使用であれば登録が取り消されることはありません。

ところで、商標の中には、アルファベットとその読みのカタカナの2段で構成された商標(二段併記と呼ばれています)です。たとえば、「ELATE」は「エラート」とも「エラテ」とも読めます。このような場合に、もし、「エラート」と読ませたければ、希望する読みを併記して、登録を受けます。

エラート1.jpg 

このような二段併記の商標について登録を受けても、実際には、アルファベットだけを、使用してしまうことがあります。これは、商標権者としては、このアルファベット表記で「エラート」と読むと認識しているからです。
 では、このようなアルファベットだけの使用でも、登録商標を使っていると取り扱ってもらえるのでしょうか?、これは、商品・サービスの需要者・取引者がどう認識するかによって変わります。称呼(読み)、観念(意味)が同一である場合には問題ありませんが、それ以外については厳しいです。そもそも、二段併記で登録するのは、多くの場合、上記のような読みが固定化されないためでしょうから、その場合には、一方のみの使用では、登録が取り消されてしまうこととなります。

 ◆ブロマガ事件では、「BlogMaga」が「ブロマガ」としか読めないのかが争われました。 登録されていたのは、BlogMagaとブロマガの二段併記の商標で、使用していたのは、カタカナ表記のみでした。

ブロマガ.jpg


商標権者は、gを発音しない例がある、BlogMagaは、いまや、ブロマガと発音すると認識されているなど、主張しましたが、特許庁は、登録商標と同一ではないと判断しました。

知財高裁も「上段の「ブロマガ」部分からは,「ブロマガ」という称呼が生じる。また,下段の「BlogMaga」部分は,「Maga」が大文字の「M」で始まること,「dog」,「frog」のような「og」の語尾を持つ一般的な英語で「g」の発音を省略することはないこと,「Blog」は ウェブログの省略語として浸透している「ブログ」を想起させることから, 全体として「ブログマガ」という称呼が生じるものと認められる。そうすると,本件商標からは,「ブロマガブログマガ」という称呼が生じるとい える。また,「ブロマガ」及び「BlogMaga」はいずれも造語であり, 特段の観念を生じるとは認め難く,本件商標からは特段の観念を生じない。イ 他方,本件使用商標は「ブロマガ」の文字のみからなるものであるから, 本件商標とは使用する文字の一部が共通するものの,外観,観念及び称呼 のいずれについても同一とはいえない。」と特許庁と同様の判断をしました。

二段併記の商標については、登録時はまだしも、CIなどの見直しで、使用形態が変更され、一方のみの使用に変わってしまうことがあります。もし、二段併記で登録を受けた場合、登録商標を使っているといいえるのかについて、検討しておく必要があるといえます。



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